拙者親方と申すは常なれど、ところどころに疲れの色が見え、果ては風呂と憚りを間違える始末。これは如何とした思いに端を発したのが外郎にて、そもそも彼奴は親族内でもみそっかすなぞんざいな扱いをされていたにもかかわらず赤字続きだった家計を黒字にした実績があるため町内会でも褒められることが多くなりにければ、そうなりゃいっそそのような職でも求めようかと町に繰り出したのが始まりにて、ところが毎度毎度頼まれるのはやれあれやれこれやれおりやれおりやれただおりやれだの無理難題にてこれじゃあ流石に私にも無理なんだいと思ってなけなしの貯金はたいて町娘を買ってぱあっと行こうではないかと思ったならばその娘がとんだ性悪で逆にあたしを楽しませなさいよと上から目線で要求してくる始末。もう辛抱ならんよ勝手にしやがれとお江戸が空を飛ぶと言わんばかりに歌舞伎の隈取のようなメイクでバンドを始めたら変な名前だけどやや流行ったテレビで知名度が出て、これがカブキロックスなんだなあ。
イワンの馬鹿といわんばかりにいやんばかん、そこはお乳なの、あはん
外郎売り 全文